大きな宿題

第12回大学教育研究フォーラム2日目。午前は、杉原さんの発表、授業評価、導入教育とはしご。有益な発表を聞けた。授業評価は自由記述の分析をどうするか、というのも1つのベクトルな感じを受けた。午後のラウンドテーブル聞けなくて残念だったのだけど、どんな話だったのかなぁ。

小講演で楠見先生@京大の「批判的思考力を育てる」というお話は非常に面白かった。授業や卒論指導において、批判的思考力をどう高めていくか、きっちりと計画され、データも取って評価も行い、とても丁寧な実践研究だった。論文を読んだり、仕事の関係でメールや電話でやり取りさせてもらったことはあったのだが、初めてお会いし、挨拶させていただいた。なんともまろやかな雰囲気の方でした。

午後、ラウンドテーブル。「遠隔教育を通して見えてきた大学教育の未来」というタイトルで、山田君、酒井さん、神藤さん、私が報告、中原君@東大、大山先生に指定討論者をお願いした。京大と鳴門教育大で行ってきたKNVと呼んでいる遠隔教育実践をベースに、遠隔教育のみならず、大学教育へと示唆できることを見つけていこう、という企画だ。山田君から聞いた時、「すごいテーマだ」と一瞬たじろぎ、まあ、なんとかなるか、と思いつつ、発表資料を作っていくうちに何も分かってない気がしてきて、とても不安になった。

発表自体は京大で関わってきた遠隔教育実践を紹介した上で、コミュニケーションの観点からKNVの実践で明らかになったことを紹介した。言いたかったことは、常々私が考えている「遠隔教育実践をデザインする際には、遠隔の特性を活かすよう、留意すべきである」ということは、「裏を返せば、遠隔教育実践で得られた知見を通常の授業でも活かすことができるのでは?」ということである。まあ、かなり強引な展開ではあるが、今回は研究発表ではないので、思い切ってみた。ポイントは下記の点。

  • 情報量が少ないことによって、議論へ集中しようとする
  • 冗長な情報(集団内でのちょっとしたやりとりなど)の伝達が重要
  • 対面と遠隔の相対化により、コミュケーションについて考えることが可能
  • 集団間の対等な関係を構築することが大事
  • そのためには、集団内の結束力の強化が必要

    中原君から「なぜ学習者が授業を構成することが重要なのか」という点、大山先生からは「遠隔と対面の二項対立から脱却できているのかどうか」という点を質問され、しどろもどろの回答しかできなかった。以前の実践から数えると6年間関わってきたが、まだよく分かっていないのが正直なところ。論文にまとめようと思うと、ある程度枠を与えて考えることになるけれど、この実践に関しては、それでいいのかどうかもよく分からない。体感ではこの実践は優れているというのは分かるのだけど。これから、もっとよく考えて悩んでいかないといけないということだ。大きな宿題だ。

    こういう機会があってよかった。山田君には感謝したい。

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    このページは、村上正行が2006年3月28日 23:55に書いたブログ記事です。

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