田口さんからご献本いただきました。ありがとうございました。大変勉強になりました。
中心は「技術」「コスト」「教育効果」の3点に注目した5つの大学の事例報告。国立・私立、都市・地方、大規模・小規模、とバランスのとれた大学が選ばれており、参考になる点がちりばめられているところがいい。今、自分の関心のあるのは支援組織作りなので、玉川大学の「コースコンサルティング」能力を持った支援スタッフの充実(p46~p47)、青山学院での企業の専門家と教員との連携、学生・院生の育成(p84~p88)などが興味深かった。
p84に書かれているのだが、海外では、先進的なe-ラーニング授業を実施する場合は1.5コマにカウントされたり、外部研究資金に応じてコマ数を減じるなどの努力が行われているところがあるそうだ。ここまでいかなくても多少の配慮も必要だと思う。現状では、先進的な取組は、「勝手にやっているのだから」といった風潮があり、通常の授業、業務にプラスして行われることが多いのではなかろうか。大学全体で支援する仕組みが必要になると思う。
7章で、”テクノロジーを活用した大学の学習環境”について「①部門のセクショナリズムが横行していたり、②学内の学習システムのイニシアチブをとる組織の不在によって、相互のシステムの存在が不可視になっていることなどから、実現が不可能になっている場合が多い。つまり、多くの場合は、ヒューマンサイドの理由によるというわけである」(p169)とある。まさにその通りだと思う。eラーニングに限ったことではないが、縦割り構造をなんとかして崩し、連携していく必要がある。
また、8章ではMITのOpenCourseWareの組織について詳細に記述されている。出版モデル、リエゾンと呼ばれるマネジメント(?)のスペシャリスト、このリエゾンを卒業生でまわしていくシステム、など非常に勉強になった。
そして、9章の4節で、eラーニング普及の支障となる要因として「教員の無理解・協力体制の欠如」、「コンテンツ作成支援の問題」、「大学全体のIT化やそのための学内体制の構築の弱さ」をあげている。この3点を少しずつ解消していく手立てを考えて、実行できればeラーニングが効果的に運用できるになるのだろう。