2007年8月 7日
2007年7月10日
山地弘起編「授業評価活用ハンドブック」
授業評価アンケートに関わる仕事をしておられる人も多いと思うのだが、そんなあなたにお薦めの本がこの本である(って、こういう書き方したらほんとに宣伝みたい(笑))。著者の皆様から献本していただきました。ありがとうございました。
授業評価アンケートの歴史、目的といった理論面から作成、分析、活用の実践面まで網羅した1冊。今までこういった本はなかったので、なかなか有用である。これから授業評価アンケートを作成したり、分析したりする方には参考になると思う。自分が授業評価委員会としての活動でやったこと、議論したことを思い返してみると、この本の内容にほとんど入っていた。あとは、自大学、学部の特徴を踏まえておけば十分ということである。短くすむとこは短い方がいいもんねぇ。
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2006年4月 9日
藤田哲也編「大学基礎講座 改増版」
導入教育のテキストのさきがけであった「大学基礎講座」に改増版が出た。藤田さんに献本していただきました。ありがとうございます。
導入教育のテキストとして多くの大学で採用されており、大学生に必要なスキルを獲得するために、非常に丁寧に体系立ててまとめられている。ノートのとり方から、テキストの読み方、要約、正しい考え方、図書館の利用、レポートの書き方、レジュメのきり方、プレゼンの方法と、これらを習得しておけば大学の授業をしっかり受けることができるだろう。他のテキストに比べると、若干、文字量が多いので、その辺は授業でカバーする必要はあるかもしれない(大学生にはこれくらい、さくっと読んでほしいけれど)。
先日の学外オリエンテーションに参加したときに話を聞いたり考えたりした語学の学習法と絡めて考えてみた。日本語であっても、やはり、文章の読み方、要約、正しい考え方、という基本は変わらない。ということは、うちのような外大でこのようなスキルをしっかりと身につけさせることが重要であることを示していると思う。今まで大学で体系立ててこのような内容を教えてこなかったわけだが、今の時代、導入教育でこれらを教えるということは必要だといえる。逆を言えば、語学を学ぼうとしている学生たちは、このような勉強の方法を知らないまま、語学を学習している学生も多いということだ。その辺り、授業する際には注意しておきたいと思う。
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2006年3月23日
山田礼子「一年次(導入)教育の日米比較」
導入教育に関する調査、論考をまとめた本。主にアメリカを対象としている。今まで教科書はいくつか出ているが、学術的な本は少ないため、導入教育がなぜ日本の大学にも必要と言われるようになったのかを知るために有用な本だと思う。
まず、アメリカの大学の特徴として、IR(Institutional Research Office、日本語では機関調査部と訳されている)の存在が指摘されている。p29以降に詳細が書かれているのだが、「大学内部のさまざまなデータの管理や戦略計画の策定、アクレディテーション機関への報告書や自己評価書の作成」を仕事にしている機関であり、教育研究、組織管理の改革を支援している。日本ではセクショナリズムの壁もあって、現状ではこういう機関は少ないのでは、と思う。しかし、国立大学も独法化したので、各大学、学長や副学長の直下にこのような機関ができていく、もしくは私が知らないだけで、すでに出来ているのかもしれない。
実践の観点からは、p91以降で論じられている「ピアリーダーシップ・プログラム」が参考になると思う。いわゆるSA(Student Assistant)になると思うが、どのように育成していくか、ということが重要な要因だと思う。導入教育を行う場合、その授業を受講した先輩の力というのは1年生にとって極めて大きいと思うからだ。2006年度から京都外大で実施する「言語と平和Ⅱ」においても数年後にはこのような方式をとれればと思っている。
正月に読んだのだが、今チェックしたところをぱらぱらと見返していると、頭に入っていないところも多い。もう1回チェックしておかないと。
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2006年3月19日
山本眞一「大学事務職員のための高等教育システム論」
職員向けの大学論。内容自体は比較的平易で、どちらかというと若手職員向けだろうか。こういった知識は体系的に教えられることも少なかったし、知識を整理するためにはいい本だと思う。また、職員として働き出すと、自分の大学しか見えなくなると思うので、その辺を打破するきっかけになるのかもしれない。大学に勤務して、職員の役割の重要性をひしひしと感じている教員としては、ぜひ多くの職員に読んでもらって意識を高めていただきたいと思う。
何でもかんでも二極化が叫ばれる昨今だが、第六章にて大学職員における二極化も指摘されている。こういう問題は、教員でも同じだと思うが、トップ層の意識改革と草の根運動の両面から解決していくしかない。もちろん、大変だが。。。
1点気になる点があった。第二章で大学院の規模が小さいことを問題にしており、原因に日本の雇用実態をあげている。確かに雇用実態には問題はあると思うが、だからといって今のような大学院の拡大を進めていいとは思えない。企業が院生を多数採用するようにならない限り、大学院生を増やすべきではないと思う。先に院生が増えてしまい、大学生の数も減っているような現状では、研究職が増えないのは当然なのだから。
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2006年3月 9日
渡部信一「ロボット化する子どもたち 「学び」の認知科学」
「学び」を、ロボットの「学び」、障害児の「学び」という視点から考えた本。ロボットを対象にして、人工知能の進歩や停滞から、行動主義心理学、認知心理学、認知科学、状況的学習論というパラダイム変化を説明しており、非常に分かりやすい。理系の人にも、文系の人にも理解しやすいと思う。参考図書として使いたい。
第5章で「教え込み型教育」と「しみ込み型教育」について述べられており、日本で伝統的に行われてきた「しみ込み型教育」について振り返るべきだと指摘している。職人のわざの伝承などはたしかに模倣などから始まる。長年共同生活をしたりすることで、言葉では伝えられないものも伝えられる関係になるともいえる。このような学びは非常に手間もかかるわけだが、うまくいけば効果は高い。教育現場にどう取り入れていくのか、というのが課題といえる。
eラーニングについても言及されている。やや否定的に取り扱っている印象も受けたが、子どもたちにとってのリアリティはどんどん変化しており、高度情報化時代の「学び」とは何かを考えていく必要がある、と言うことだと思う。また、自閉症の子どもにおける「学び」についての部分は知らないことも多く、勉強になった。
渡部先生は東北大学インターネットスクール(ISTU)でお名前は存じていたのだが、こういう研究をされてきたとは知らなかった。
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2006年3月 6日
平高史也・古石篤子・山本純一「外国語教育のリ・デザイン 慶應SFCの現場から」
SFCにおける外国語教育の理念、カリキュラム、教材開発などについて書かれた本。SFCでは、英語のみならず、ドイツ語、中国語、スペイン語、フランス語、マレー・インドネシア語、アラビヤ語、朝鮮語について第一外国語として学習できるような環境作りをしている。孫引きになるが、三浦信孝は『多言語主義とは何か』(1997)において、「言葉の多様性に意義を認め、互いに相手の言葉を学びあうことで意思の疎通をはかろうとする態度を『多言語主義』と呼ぶことができる」と述べている。この『多言語主義』というのは、うちの大学にも通じるものがあり、参考にできるところがたくさんあるという気がした。
2部では、カリキュラム、IT、留学制度の各論が、3部では上級向けのコンテンツ重視(外国語を学ぶ、から、外国語で学ぶ、という変化と言えるだろか)の取り組みが記されている。専門的にはIT利用(CALL)に目が行く部分もあるが、外大に勤める身としてはカリキュラムとコンテンツのところが興味深かった。学生にいかに外国語を身につけてもらうか、さらに教養を身につけてもらうか、というところはこの2つに依存するところが大きいと思うからである。ITや留学は補助的に支えるものかな、という気がしている。
ともかく大学における外国語教育を考える際には参考になる本だと思う。
ところで、望月君が出てきてびっくりした。スペイン語の教材を作っていたとのこと。すごいなー。うちの大学でもなんかやってもらわないといけないなー(笑)。2006年2月25日にSFCでシンポジウムがあったようで、望月君が感想を書いておられました。「『次世代の外国語教育デザイン』に思う」。
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2005年4月11日
關昭太郎「早稲田再生」
金融出身の早稲田大学副総長の奮闘記。大学という特殊な環境での仕事にいろいろ苦労しながらも、改革に向けて進んでいこうとする様はすごいと感じた。p19に書かれているが、大学というのはスピードが遅く、既得権益を守ろうとし、責任の所在があいまいという組織である。ずっと大学で生きているとそのあたりが麻痺してくるのだろう(自分もそうなっている部分があるので反省しないといけない)。
理事・幹部の特権剥奪(p47)、経費削減運動(p48)、財務情報などの公開性と透明性(p107)など納得のものが多く、自分としてもできることはやっていかねば、と思った。
こういう意識を上層部に持ってもらうことが大事だと思うが、私のような下層部も意識しておくことが変革に向けての第一歩になるのではないかと思う。
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2005年4月 2日
石浦章一「東大教授の通信簿」
東京大学の教養学部前期課程(1、2回生)の授業評価アンケートの結果をまとめたもの。うちの大学で全学に対する授業評価アンケートを集計、分析した立場としての感想は、授業評価アンケートの結果や考察、教員の反応は東大でもどこでもあまり変わらないな、ということ。新しい知識は特に得られなかったが、こういった内容のものが新書で出て世間に知られるということに意味があるように感じられた。タイトルもキャッチーだし。
やはり、教員の中には「学生にどのような授業がいいのか評価する能力がない」「こんな授業アンケートで何が分かるのか」などと言う方がおられるようだ。もちろん、授業評価アンケートは授業の一側面を映したものであるが、そこからでもいろんな問題点が見えてくると思うので、その辺りは真摯に受け止めていきたいと思う。また、授業評価の結果を受けて、FDにも力を入れておられ、授業の相互参観なども熱心に行っておられるようである。東大がこういうことを行い、アピールすることは重要だと思う。ただ、他の大学も多数取り組んでおられているので、ちょっと書き方が強い感じも受けた。
ちょっと気になった点が2つ。男女共同参画について述べられているが、女性教員は男性教員と授業評価の結果が変わらないことを「驚くべきもの」と評している(p178)のは、結果的に”男女の結果が違う”と暗に思っていたということを示しているので、おかしいのでは?と感じた。また、東大のコマ数が少ないのは理解できるのだが、「年8コマで驚いてはいけません」と書かなければいいのに、、、とは思いました。私も年14コマ、非常勤入れれば18コマですからね、、、。
いろいろ書いたが、東大がこういうことに力を入れていることを公表することには意味があると思うし、授業の相互参観など、広まるきっかけになればいいと思います。
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2005年3月31日
溝上慎一・藤田哲也編「心理学者、大学教育への挑戦」
溝上さん@京大高等教育センターからご献本いただきました。ありがとうございます。
心理学者が、大学実践の中で心理学の知見を活かすこと、大学教育実践をどのように研究していくかを明らかにすること、を目指した論考集。実践ベースに書かれていてとても読みやすいし、大学教育に関わるものとして今関心のあるテーマばかりが対象(授業評価、導入教育、主体的な学習)なので、非常に参考になった。
大塚先生は1章で授業評価をどの授業改善につなげていくかについて論じられ、毎回授業評価の実践を事例としてあげている。その上で、自らの実践の中で評定平均値を意味づけていくプロセスを”実践的妥当化”と定義し、このプロセスが重要である(p23)と述べている。授業評価は多く行われているが、教員がこの実践的妥当化を行えれば、授業評価をした意味はここでかなりなしえたのではないか、と思った。
また、主体的な授業作りでは2章のポジショニング技法(溝上さん)、4章のLTD話し合い学習法(安永先生)、導入教育(スタディスキルズ)では3章の動機付けをふまえた光華女子大での実践(藤田さん)、6章のリテラシー教育(西垣先生)とあり、各章にコメント論文もついて、盛りだくさんであった。5章(田中先生)は、自分の興味対象とはちょっと違ったが、考えさせられる内容であった。
このような理論を踏まえた実践ベースの研究がどんどん行われていくべきだし、自分もそうしていきたいと思わせてくれる一冊でした。
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2005年2月 8日
山田昌弘「希望格差社会」
「リスク化」と「二極化」という2つのキーワードをもとに、現代社会の問題について述べた本。分かりやすく読むことができる、ということは、これだけ問題が山積しているということで、怖くもある。5章の「職業の不安定化」が一番身につまされる。産業構造の転換(仕事の二極化)から非正社員の雇用につながるということで、若年労働者のフリーターが増えることになる。今はパラサイトしていれば大丈夫な人たちも、いずれはそうはいかなくなる。ただ、解決策はなかなかない。
現代社会を把握するにはいい本。講義録がベースになっていて、学生とのやり取りもいろいろあったそうだ。うちの学生に読ませたらどんな反応をするのだろうか。
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2005年2月 1日
溝上慎一「現代大学生論」
('04/6/26の日記より転載)
あいもかわらず、溝上さんのすごさには驚くばかり。よくここまできっちりと調べて記述できるものだ。NHKブックスという一般書なので、かなり平易には書かれているがデータ量は半端じゃない。内容としては、80年代までの「アウトサイド・イン」(いい大学に入ることなどを目指して、その流れとして大人社会に入っていく)と、90年代以降増えてきた「インサイド・アウト」(自分探しをしながら職業社会に入っていく)の2種類の生き方ダイナミックスがあるということ、そのダイナミックスを通して大学生の生活を記述したものである。どっちの生き方でもかまわないが、現代の大学生は”生き方を迫られる”ということである。情報があふれ、不景気であり、若年雇用は抑えられ。若者にとっては希望を持ちにくい時代ともいえ、だからこそ「やりたいことをやる」生き方に流れるのかもしれない。とりあえず生きていくだけのアルバイトは見つかりますからね。
でも、やりたいことが見つけられる人はいい。問題は「インサイド・アウト」の生き方を選択し(迫られ)、でも特段やりたいことも見つからない学生だろう。「パラサイト・シングル」という言葉が以前はやったが、過保護な親も増え、とりあえずは生きてはいける社会である。ご飯が食べられない、という人の数はかなり減っているだろう。それでなんとなく暮らしていってはいつか行き詰まる。生きにくい時代ではあるが、学生には厳しい環境に身をおいて暮らしてほしい。その中から何かが見つけられると思うんですが。
大学生の生活が綿密に記述された本なので、大学関係者の方にはぜひ一読をお薦めします。
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2004年12月 9日
鈴木佑治「英語教育のグランド・デザイン」
慶應SFCにおける英語教育のカリキュラムや授業内容について紹介した本。ちょっとSFC独自の話もあって分かりにくかったり、特殊な例をとりあげているなぁ、という部分もあったのだけど、新しい語学教育のカリキュラムを作ろうとした気概が感じられたし、実際に実践できているところがすごいと思う。やはり、教員の多くが改革へ向けて動こうという気持ちがあったからなのでしょうか。
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2004年11月24日
杉山幸丸「崖っぷち弱小大学物語」
ほかのWeb日記でもちらほら見かけていたので気になっていたのだけれど、先日購入して一気に通読。なるほど、と納得。よくここまで書けたなぁ、というのが正直な感想。これは筆者が京大霊長類研究所所長でもあったことによるものなんだろうけど。私でも大学に就職したときにいろいろ不条理な点があって驚いたものだけど、筆者は30数年京大の研究所に勤務し、今の大学に移ったときには、それはそれは大きなショックだったことでしょう。
残念ながら、この本に書かれていることは大体確かである。一般的に、大学の運営そのものにおかしな点が多く、問題は山積み。改善しようと努力すると、一部に負担が偏ってしまい、不均衡になる。かたや授業だけやってる教員、かたや授業コマ数も多い上に、雑用や会議や研究でいっぱいいっぱいの教員、しかも給料は変わらない、なんてことになるわけである。別にうちの大学がそう、というわけではないのだけれど、あてはまる点も多いのです。
というわけで、大学関係者のみならず、幅広い人に読んでもらって大学の実態を知ってもらえると、大学選びの時などにも役に立つかも?
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2004年11月23日
潮木守一「世界の大学危機」
世界の大学の歴史と問題点をまとめ、日本における大学の諸問題を見直している本。もともと桜美林大学大学院の大学アドミニストレーション課程での教科書として書かれたものをまとめなおしたものだそうで、とても分かりやすかった。大学問題を学ぶ人にとっては必読書であると思う。
もともと大学は研究が第一の目標であり、その環境に若者の一部をおくことによって教育する機関であったことは間違いないだろう。しかし、現代では、日本を始めとする先進国では50%以上もの若者が大学に通うようになり、昔のままの大学というわけにはいかず、各国ともいろいろ問題を抱えているようである。日本ももっとマクロな視点から考えられればいいのだけど、結局は自大学しか見ないし、違う方違う方にいっちゃうんだろうな。
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2004年8月14日
山本眞一編「SDが変える大学の未来」
この本は筑波大学大学研究センターが開催した「大学経営人材養成に関する短期集中公開研究会」の講演をまとめたものである。 SDとは"Staff Development"の略で、大学職員の研修のことである。標準偏差でもなければ、メモリーカードでもない、なんて(笑)。 "FD(Faculty Development)"と対応するものと言えるだろうか。内容はドラスティックなものもあったが、基本的には「プロ意識を持つ、幅広い視点を持つ」という点が根底にあるのだろうと思った。
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