2004年12月27日

齋藤孝「コミュニケーション力」


齋藤孝の本は、久しぶり。大量生産してますよね。おそらく他の本で抱えている内容と重なる部分が多いのだろうけど、分かりやすい。基本的に身体論にひきつけられている。

p77-78にあるように「あっかんべー」や「イーッだ」といった身体表現が衰退し、ひっかきあうといった相互的な身体コミュニケーションがなくなり、ナイフなどの非身体的、非相互的な道具をいきなり使ってしまうところに問題があると指摘している。このように、身体によるコミュニケーション力が低下しているのは確かだと思う。小さい頃に、ケンカをしないから、大きくなってなにかことが起こった時に加減が分からなくて大怪我につながってしまうという話はよく聞くし。「目を見る」「微笑む」「頷く」「相槌を打つ」といった基本原則をあげ、そのスキルを身につけるための方法などについて書かれており、すぐに使えそうである。この辺が本が売れる要因の1つなんだろう。

また、会議の運営や質問力、コメント力といったことについてもまとめられており、読みやすい。そんなにすごいことを書いているとは思わないけれど、分かりやすく書くことの必要を認識させられる。詳しく知るには、ちゃんと別の本があるので、その本を買う必要もあるのだろうけど。

山田真哉「女子大生会計士の事件簿 DX.2騒がしい探偵や怪盗たち」


女子大生会計士シリーズ第2弾。第1弾に続いて、すぐに文庫になりましたね。インターネットと株価操作、内部統制など一般常識としても知っておいた方がいいテーマもあり、軽く読むことができ、便利。

2004年12月26日

桐野夏生「柔らかな頬」(上)(下)

桐野夏生の直木賞受賞作。幼女失踪事件をとりまく人間達の心の動きを追った作品。人間の弱さを細かく描いていて恐くもある。人間は、今までの人生への疑問や何らかの罪の意識などを抱えている、ということはあるだろうだから、恐く感じられるのかもしれない。

個人的には小説だけにラストはちょっと納得のいかない部分があった。これは桐野作品の特徴でもあるのだろうけど、途中に夢の中で事件の結論が出てきたり(もちろん事実ではない)のだが、その記述が生々しいだけに期待した部分があったので。

2004年12月 9日

折原一「沈黙者」

「~者」シリーズ第3弾。一部、動機に無理もなくはないが、個人的には面白く、読みやすいと思った作品。叙述トリックとしてはシンプルですっと入ってきた。佐野洋氏が解説で述べているように、実際にあった事件が下敷きになったいるらしい。すごいことやなぁ。

 

中川一史「実践的情報教育カイゼン提案」

情報教育の改善のために重要になるポイントをまとめた本。主に初等教育の実践をベースにしているので、現場の教員には参考になるのではないかと思う。私としては、高等教育の実践を考えていく上でも、初等教育のことを勉強しないといけないな、と思っていたので、おさらいにちょうどよかった。

ただ、高等学校の情報教育については、またちょっと別の話かな、という気がしているので、その辺もまた考えていきたい。

丹羽健夫「予備校が教育を救う」

タイトルはちょっとキャッチーな感じがするが、実践ベースに予備校の理念を伝えた本ということだろうか。予備校は常に学校とは異なる路線を歩むことになると思うのだが、”学問への思い”が強くこめられているものは面白いというのは、学校だろうが予備校だろうが、どこでも変わらないということだと思う。また、授業評価の結果の受け止め方や授業への取り組み姿勢というのは、大学でも参考になる部分があると思う。また、入試問題の日韓中比較は面白かった。

大学についても述べられていて、大学を3つに分類している(この辺は田中先生@京大と同じ)。そこで、「よき社会人養成大学」は専門学校に近づいていく、といったくだりがある(p189)。専門学校の台頭も目覚しいし、大学と専門学校の棲み分けというのも難しくなっていくんでしょうね。

鈴木佑治「英語教育のグランド・デザイン」

慶應SFCにおける英語教育のカリキュラムや授業内容について紹介した本。ちょっとSFC独自の話もあって分かりにくかったり、特殊な例をとりあげているなぁ、という部分もあったのだけど、新しい語学教育のカリキュラムを作ろうとした気概が感じられたし、実際に実践できているところがすごいと思う。やはり、教員の多くが改革へ向けて動こうという気持ちがあったからなのでしょうか。

2004年12月 2日

山田昌弘「パラサイト社会のゆくえ」


「パラサイトシングル」を提唱した山田昌弘氏の続編(?)。

「子どものしあわせ」を願うから、子どもを産む数をしぼり、子どもの生活をよりよくしようとする。いわゆる「12の眼」というやつで、支援も集まる。しかし、子どもの数は減り、長い眼で見ると経済構造は低下していくということらしい。

大学の倒産やフリーター、年金の問題など、現代の社会問題を分かりやすくまとめた一冊。就職活動を控えた大学生には、時事問題を知る上でもお薦めだと思う。

佐藤博樹・武石恵美子「男性の育児休業」


男性の育児休業に関する海外の動向や日本の現状、今後向かうべき方向について書かれている。

海外では、ワークシェアリングや短期休暇などがあり、国レベルで支援を進めているところもあるらしい。やはり日本では、制度面もそうだけど、男性が育児休暇をとる雰囲気がなかなかない。確かに、自分が育児休業制度をとるか、っていうと、多分とらないなぁ。まあ、この職業だと、家で研究できればなんとかなるかもしれないとは思うんだけど。このあたりはやはり導入事例を増やして、一般的に理解してもらえるようにしないといけないでしょうね。

育児休業制度だけではなく、雇用体制などすべてを含めた”企業のスタンス”というのが、重要になるだろう。若者雇用の抑制をはじめとして、今は短期的な視野で物事を進めていくところが多すぎる気がする。なんとか改善してほしいものですね。