認知科学者が中心となって<家>や<家庭>を対象に研究した結果や考えをまとめた本。認知科学だけではなく社会学や発達心理学などの観点からの論述もあってかなり面白い。1つの対象で、ある程度分野を絞ってもこれだけの切り口がある、ということを示していると思う。全体的には、情報技術の発展による「家族の情報化」と、家族の「個別化」-「一体化」の関係性を論じているように感じられた。家事を行うための電化製品や携帯電話などの普及によって、個別化が助長されるという懸念はあるが、逆に連帯感を強める方向にも進むことができるということだ。道具は考えを助長するけれど、考えが道具の使い方を決定することもある。コミュニケーションもリッチなほうがいいとは限らない、意味づけるのは使う人間だということを念頭におかないといけない、ということだと思う。
あと、興味深かったのはライオンの渡辺治雄氏が書かれた11章「人にやさしい製品を作る」。洗剤の容器の設計などをする上で、行動観察をしてデータを集めて、より使いやすい製品を作成する、というのは面白かった。製品の内容もそうだが、使い勝手のよさというのは製品販売において重要なファクターですもんね。この話は授業で使えそう。